my friend,
世界に黒い布をかけて
すべて真夜中にしてしまったよ
じゃなきゃだめになりそうだったから
こんなぼくを信じるきみのことが
いつまでも見えているここからでは
いつになっても歩き出せなかったから
だから真夜中を連れてきてしまったんだよ
ぼくに借りがある
あいつは絶対に逆らわないからね
これの意味が、わかるでしょう?
あいつにぼくは貸しがあるんだ
+
dear shine,
その線からこっちへ
一歩でも入ったら刺す
たとえきみがぼくの
気に入りのぬいぐるみをたずさえていても
いや
むしろそれを一番の理由として
どうしようもない息の根をどうにかする
きみにはわかんないんだ
大切と破壊はおんなじだ
必ずどこかでつながってるんだって
だからぼくは泣かなかった
ぼくを殴るきみはかわいそうでかわいい
なにもわからないでいてとてもかわいい
+
dear rain,
わかってなんか
もらえなくていい誰にも
そう口にした途端
きみの絶縁は滑稽を極める
だってきみ
それじゃまるで駄々と同じだ
すこしでも視線が合えば
たちまちそっぽをむいて、さあ
ただひとつきみにおいて幸いなことに
どうやらこの僕は見捨てないようなのだ
おかしな僕は自分の半身がずぶ濡れても
同じ傘の下に入れてあげるつもりなようだ
+
「決して祈ってはいけない」
帰る場所があるということを知っているということは想像以上に重大で、それが有ると無いとの差は生命の
存続を簡単に左右する。僕は比較的思ったままを言葉にするほうでそれにより罵られ
ようが新たな呼称を授かろうがそれはもうどうだっていいこととして吐き捨てるようにしている。後方へ流
れていく、たなびく長い布の向こうから、血が走ってやってくる。赤い、赤い、絵の具のように正しい赤を
した赤色はまるで化学反応みたいに白を浸食し徹底的に、息の根を、止めるために僕の背中に追いつこうと
する。夜の間は分からない。長い布が白なのか赤なのか。だから僕は走り続けて寝ることも忘れるんだけど
、ふと、「いっそこのまま」と思う瞬間だってあるんだ。遠くで彗星が爆ぜて目の端がチカチカッと光るよ
うな時に。誰も乞わない。誰も望まない。そんな手が何色をしていようがたとえば僕があの彗星のように夜
に小さく爆ぜようが、そんなこともうどうだっていいじゃないか。地上で両手を組んだ窓際の子どもは毒薬
を盛られた膳を食したために明後日には死んでしまう予定で、黒いまっくろな目があんまり真剣にまっくろ
だから、せめて彼が死ぬまでは僕も逃げるのをやめないでいよう、爆ぜて消えてなくなってしまうことのな
いように留意しよう、などと思っていたのだけれど、それは彼の信じるという行為への冒涜に過ぎないんじ
ゃないか。彼はきっとわかっている。わかって毒の盛られた水を呷り、わかって毒の盛られた匙を口に含ん
だ。だからあんなにまっくろな目をして誰のどこにいるとも知れぬ場所をなんかいつまでも見上げていられ
るんだ。たとえば僕が応えてあげようじゃないか。信じるを裏切り、今ここで爆ぜたら。信じるという行為
の中でもっとも崇高な、裏切られるかもしれない可能性を承知でなお信じた、という彼の精神の誉れ、僕は
証明してあげられるんじゃないのかな、なあんて思うんだ。帰る場所はどこにでもある。爆ぜて散って屑に
なっても、帰る場所はどこにでもある。
+
「space sufferers」
たったいま腑に落ちた
きみの愛ってどうやらカスだな
いっそまっすぐ
そのせいで誤って
心臓を刺し違えるくらいでいい
求心力を失ったこの星から
いつかてんでばらばらに
放り出されちゃうくらいなら
+
「世界の果ての踊り子たち」
願いに慣れない方法でしか祈りは届かない
惨劇を続けることでしか何が尊いかなど分からない
忘れ続けることも語る者が消えていくことも
繰り返し繰り返しそしてまた繰り返すため
時はめぐって
神様はまだ消えたくはない
だってさみしいんだもの
跪いて目を凝らしてくれるひともいないなら
絶望の消えたとき世界は本当に終わるって
七歳の子どもでも知っているの
神様だって知っているもの
+
「500文字の輪廻転生」
それは違うって否定したとしても実際それを違ったことにするのは難しいんじゃないかな当たり前に考えて
。誰かの駄々漏れが空を塗り替えて世界を塗り替えて僕の昨日や明日を塗り替えていくからまだ絆断ち切れ
ないね。握手。抱擁。上から目線。そんなことよりもいま欲しいのはスプーン。このアイスをすくって食べ
ることのできるスプーンだ。
失せよ幻想。現実はいま羽ばたいた。私が夢を手離した時それは溶けて夢になった。深夜一時の境界線。地
上百二十階の窓から黒服の一人が現れて私にしずかに傅いて何か告げる。耳はその記号を解読し身は直ちに
夜へ投げ出される。地球が欲しがる。欲しがる。その請願を退けられず私は翌朝の記事に載る。
多くの光景が何一つ意味を与えられず生まれては消えていくのを、そして誰もいなくなるのを僕は耳を澄ま
せて待っていた。ここではたくさんの愛撫と罵倒とが賭け事をしている。多く備えて立ち向かってもその装
備がかえってお荷物となって肝心なところで躓いてしまったり、といってむき出しで立ち向かえばそれもそ
のまま破滅してしまったりと。世界はまあなんとも忙しない。
なぜ生まれ変わることばかりを望む?
まずはちゃんと死んでみせろよ。
+
「ただ眠くて空腹なだけ。そしてその連続」。
生きることを語る言葉がそれだけだったならばなあ。誰も誰かの手のかわりに凶器を握ったりしないで済ん
だろうになあ。美化と救済は各人の自由であり責任を負わなくともいいが(言い換えれば裁く者がここに不
在ということだ)言葉にした瞬間から重みは生じている。だから僕はきみが泣いても笑わせてあげない。い
つかそれがどんなに必要だったとしても。冷たい、人。でもこれだけは云える。から、云う。
ただ眠くて空腹なだけ。生きることはそしてその連続。
みんな綺麗でみんな騙されることに白熱していて、きみにそれを誰も教えなかったろう? だいじょうぶ、
ねえ、それだけだよ。
きみに対する僕の要求なんて、本当にそれだけなんです。