会えないのなら
会いたく
ならないようにしよう
そう決めたんだ
すべてを捨てて
ほんとうにすべて
それから新しく飼う
そして気づく
すべてを捨てて
残ったもの
新しく飼って
ここにいないもの
存在は不在だが
不在は存在
し
つづけること
爆弾を投げ込まれても
ナイフ突きつけられても
きみはぼくを守らない
白昼も夕方も
あの子ばかり見ていた
+
蛍光ペンみたいな青空
星はガラガラと音を立て
地上にばらまかれた
トリックとツイート
真夏日の幸せは尽きない
きみの不幸がある限り
いつまでも足りないでいてよ
いっしょに新しい地獄を歩こう
+
茎から切られた花盛りの紫陽花を拾い
何を考えているのかわからないきみの
何が特別かわからない脳味噌を思う
閉じそびれた日傘が坂道を転げていく
トラックに轢かれる
皮膚の少し焼ける感覚がある
喉が渇いてすぐ潤う感覚が
愛と犠牲のアンバランスが如実なステージの始まり
幕開けは終焉へのカウントダウンと知ってなお
ぼくのせいで困り続けるきみを見ていたいと思う
思うから今年も死なないで夏を生きようとする
+
目覚めて真っ先に指先がふれるもの
仮定と証明を繰り返す朝
雲に覆われた空を暴いても
あの星座はあの場所にいない
手が届かないものを望むことは
痛みを伴うぶん
そのせいでいつも少し心地よい
世界からいらないと言われた
きみは明らかにしょげながら
かわいくない花に水やりをしている
姿の見えないものに育まれるぼくと
不在によっても危機を与えられないきみと
似ながらかけ離れて、だから尊い
いい加減この気持ちの名前を教えて
+
迷いながら歩き回った夜
消えた知人をさがしている
光る魔の手はほとんどを誑かした
ぼくだけは逃げ切らないといけない
きみはまた閉じ込められている
毎回毎回呆れるよ本当に
べつべつのところから同じ血を溢れさせて
その時ぼくに相談ひとつしないで
茜色の次に訪れるもの
そのために夜明けを受け入れた始まり
暴力的な光なら凍らせて叩き割ろう
きみの流す血は美しいよ
+
正体を消せば
風の音がよく聞こえる
正体を知られれば
視線はもうかわせない
真夏日に見下ろすアスファルト
壊れた傘が捨てられている
跨いで地面に伸びる影が
ぼくのより少しだけ薄いんだね
きみがだれでも
ぼくがだれでも
変わらない世界の
それを優しさだと仮定する
緑色に爛れる脳味噌
紫陽花のなれのはて
消えかかる首輪の跡
どこへ行かないでも許されるということ。
+
あなたが
意味したものがわからなくて
ぼくはまだ
波止場から動けないでいる
約束をしたんだ
思い出せないくらい昔に
忘れられないくらい優しい
優しい約束をしたんだ
そのために致死量未満の血が流れ
そのために発狂未満の負荷がかかり
もういいじゃないかと何人もに言われた
愛を騙った礫を幾つもくぐってきた
破られていないことは確かだ
灯台からあかりが漏れている
あれは誰にも奪えなかった
あの日の青空が放つに違いない
+
君に伝える
たったひとつの気持ちのために
たくさんの言葉がうまれた
書いては捨てた
勘付かれまいと
たくさんの言葉が
伝えるものがほんとうは何かを
勘付かれまいと
そんなことを続けていたら
雨が降った
長くて激しい雨だ
これが地球最後の雨なんじゃないかと
心配になるような降りかたをした
素直になると虹がかかった
なんだそんなものかと呆気なかった
地球最後を望んでいたわけでもないくせに
桜が散るのを切ないと言うね
夏の終わりは切ないと言うね
秋は空が高くて切ないと聞く
冬が切なくない理由を考えていた
夏の次に来るものであり
後には春が来るからだ
僕は余計なことのために時間をかける
余計だけれど必要なこと
余計なことをしているという感覚を忘れたくないんだ
君を好きだった
+
きみはぼくにのみこまれて
ぼくは狼にのみこまれて
狼はおばあさんにのみこまれて
おばあさんは毛布にのみこまれて
毛布はアップルパイのにおいにのみこまれて
アップルパイのにおいはアパートメントにのみこまれて
アパートメントはくじらにのみこまれて
くじらは街にのみこまれて
街は森にのみこまれて
森は夜にのみこまれて
夜は静けさにのみこまれて
静けさはどこまでも深い色に飲み込まれて
夢の中できみがひとりそれに青色と名づける
きみだけがそれに名前をつけられる
+
背骨にビー玉をころがす
ネクタイの結びかたを教わり
犬の死に方について教えた
この部屋で
ぼくはきみについてたくさんの
まだ知らないことがあってまだ飽きない
もしもすべて知ったら退屈になって
まだ何も知らない相手をさがすのかな
それとも退屈の先になにかあるかしら
なにもないけど平気でいられるかしら
ぼくの知るたくさんの
いわゆる愛しあうひとびとが
そうであるように
あるいは少なくともそう見えるように
誰へ対するマナーなの
誰のためのショウなの
傷つきやすくて傷つけてばかりの
かけらばかりで出来上がった命に
きみはいつでもふれていいよ
そのせいでぼくの気はふれていいよ
こんな朝になら
こんな夜になら